剰余変数を統制するのは大事だよ、という話

心理学で実験を行う際には、実験計画法という作法を知っておく必要がある。実験計画法というのは、実験を行ったときに、良いデータを取るための知恵のようなものだ。

我々がデータを取るときには、全体をAとB、というように群に分ける。こうやってできた群を比較し、その間にある差に注目することで、現象を知ろうという訳だ。もちろんAとBだけではない場合だってある。A, B, C, D, E, F といったように、6つの群を作る場合だってある。そしてこのとき、分けられた群というのは、等質になるようにしなくてはならない。たとえば実験室の光の量が違っていたり、室温が違っていたり、実験に使う道具が違うものだったり、実験に関係する様々な要素を一定にしないといけない。なぜなら、群から得られるそれぞれのデータを問題にするとき、我々は、「群に対してどのように手を加えたときに、どんな変化が現れるか」に興味がある訳で、その他の事柄によって様々な影響が出てもらっては困るのだ。だから環境は等質になるようにしなくてはいけない。

実験に複数の人を被験者として使う場合も同じだ。群によって人数が違っていたり、平均年齢が大きく違っていたり、性別が偏っていたり、場合によっては出身国が偏っていたりしてはいけない。AからEまでの群は大学生で、F群は幼稚園児です、なんて分け方をしたら、実験の結果がそれだけで違ってきてしまうだろう。だから、そういうところはちゃんと気を遣わないといけない。

こうやって、群はきちんと統制しないといけない。なんでそこまでして等質にしたがるのか。繰り返しになるが、「調べたいと思っている事柄以外にも、何か影響がありそうなことが絡んでいてはいけない」と思うからだ。調べたいと思っている事柄よりも、もっと影響力がある事柄があったりしたら、比較も何も成り立たなくなってしまう。

我々は、実験においては、何か要因を操作して、その結果、どのような現象が起きるかを観察する。この操作される要素を「独立変数」、その結果測定される反応などを「従属変数」と呼ぶ。そして、上の例のように、従属変数に何らかの影響を及ぼしているけど、操作できてないものを「剰余変数」と呼んでいる。独立変数と剰余変数がきちんと分離できていないと、剰余変数の影響も従属変数に反映されてしまう。これでは独立変数の効果なのか、それとも剰余変数の効果なのか、よくわからなくなってしまう。だから統制が必要なのだ。

あと、実験をしている最中にも、色々と剰余変数が出てきてしまう。たとえば繰り返し繰り返し実験に参加してもらったりすると、繰り返すことで被験者が実験に慣れてしまったり、疲れてしまったりということも起きる。ここらへんもきちんと操作しないといけない。それには、乱数表を使った試行順序の無作為化とか、カウンターバランスという手法を使ったりする。また心理学では、実験をする際には、実験群と統制群という二つの群を設定することが多い。統制群をもうけることはとても大事だ(要例示)。そして実験群と統制群は、できるだけ等質になるようにしないといけない。こちらも乱数表を使った無作為化や、マッチングといった手法が用いられる。

しつこく繰り返したが、心理学実験では、問題となっている用件以外は全て等質だよ、という仮定で話が進んでいく。そして、等質じゃない部分は「誤差」の中に押し込んでいく。そして、この誤差は偶然発生する誤差以外は排除されていかねばならない。そのための手法が統制なのである。

#なぜこんな感じに書かねばならないかというと、「偶然出た誤差」と「条件の平均値間の差」の比較が分散分析だから。